アブストラクト(31巻10号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : リンゴ酸の心筋保護効果に関する実験的研究
Subtitle :
Authors : 曽我部仁史, 井上権治
Authors(kana) :
Organization : 徳島大学医学部外科学第2講座
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 31
Number : 10
Page : 1537-1543
Year/Month : 1983 / 10
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 嫌気的条件下にてもATP産生の可能性が示唆されるリンゴ酸の心筋保護効果を検討するため, 我々が現在臨床に用いている冠灌流液(TO-Kl液)にリンゴ酸10mMを加えたものと, 加えないものとについて, ラット摘出心を用い35±0.5℃の比較的高温下で間歇的冠灌流を行い比較した. 1. 心機能: 30分間の心停止後Langendorff灌流より脱してworking heartとなることが, リンゴ酸非添加群では全例左房圧10cmH2O以下では不可能であるのに対し, リンゴ酸添加群では全例左房圧6cmH2Oで可能であった. 心機能曲線においてもリンゴ酸添加群は非添加群に比し左上方への偏位を認め明らかに良好な心機能を示した. 2. ミトコンドリア呼吸調節能: 40分間の心停止後心筋ミトコンドリアを単離し, 酸素電極法にて呼吸調節能を測定した. 対照群1.88±0.07, リンゴ酸添加群1.64±0.14, リンゴ酸非添加群1.42±0.12で, リンゴ酸を加えた群においてより高値を示した(p<0.001). 3. 心筋内ATP及び乳酸: 40分間の心停止後, 直ちに心臓を液体窒素にて凍結し, これを磨細, 除蛋白し測定試料を作製し, 酵素学的手法にてATP, 乳酸を測定した. ATPは対照群2.96±0.55μmol/g.w.w., リンゴ酸添加群1.91±0.19, リンゴ酸非添加群1.09±0.33であった. 心筋内乳酸値は, 対照群5.1±1.6, リンゴ酸添加群15.1±2.2, リンゴ酸非添加群29.3±2.8で, リンゴ酸を加えた群は加えない群に比し心筋内ATPがより多く温存され(p<0.001), また乳酸の蓄積も軽度であった(p<0.001). リンゴ酸添加群が非添加群に比し明らかに良好な心筋保護効果を示したのは, 嫌気的条件下においてリンゴ酸を基質としてATPが産生されたためと考えられる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : リンゴ酸, 心筋保護, 嫌気的代謝, ミトコンドリア呼吸調節能, 間歇的冠灌流
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