アブストラクト(31巻10号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : A-Cバイパス術のグラフト開存に関する臨床的検討
Subtitle :
Authors : 中井義廣, 井上権治
Authors(kana) :
Organization : 徳島大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 31
Number : 10
Page : 1544-1552
Year/Month : 1983 / 10
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : A-Cバイパス31例, 76枝について術前の冠動脈造影, 術中のグラフト流量, 冠動脈血管抵抗について検討を行い以下の結果を得た. 1) 術前冠動脈造影時, ニトログリセリン(NTG)舌下投与を行い, 冠動脈は直径で平均22%, 断面積で平均48%の増加を示した. 断面積の増加率と術中測定したグラフト流量との間に, 右冠動脈(r=0.65)左冠動脈(r=0.65)の正の相関関係が認められた. 断面積の増加率が20%以下の冠動脈においたグラフトは術後造影で全枝閉塞していた. 2) 術前の左心室造影と術中測定を行った冠動脈血管抵抗について検討を加えた. 左室の動きが正常な領域に注ぐ冠動脈の血管抵抗は0.79±0.18mmHg/ml/min, 異常な働きを示し既往に心筋梗塞のある領域の血管抵抗は1.27±0.50mmHg/ml/min (p<0.005), 異常な動きをするが, 心筋梗塞の既往のない領域の血管抵抗1.29±0.53mmHg/ml/min(p<0.001)と有意差があった. 3) グラフト流量と冠動脈血管抵抗の間に, y=8.16+38.78/x (r=-0.62, p<0.001)の負の相関関係が認められた. 4) 過負荷にならない程度の容量負荷を行うと, 血圧は有意に上昇し, グラフト流量は, 33±13ml/minより45±14ml/minに増加(p<0.02)した. 5) Dipyridamole投与によりグラフト流量は, 52±28ml/minより74±37ml/minに増加(p<0.02)した. しかしながら, 冠動脈血管抵抗の違いによりグラフト流量の増加率に差がみられた. 血管抵抗が1mmHg/ml/min未満では増加率は68.7±53.8%, 以上では22.8±28.7%(p<0.02)であった. 6) 以上より術前の冠動脈造影でNTGに対する断面積の増加率が少なく, 術中のグラフト流量が少ない場合は術後グラフトが閉塞する危険性が高いと思われた. これに対して術後の容量負荷による血圧上昇やDipyridamoleの静脈内投与はグラフトの閉塞を減少させるのに有効と考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : グラフト流量, 断面積増加率, Dipyridamole, 冠動脈血管抵抗
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