Authors : |
岸本英文1), 広瀬一1), 中埜粛1), 島崎靖久1), 八木原俊克1), 榊原哲夫1), 佐藤重夫1), 川島康生1), 北村惣一郎2), 河内寛治2) |
Abstract : |
合併心奇形を有さない二次孔型心房中隔欠損症(ASD)13例と, 検査の結果心疾患なしと判定された9例について, 二方向映画造影法による左右心室容積の計測から右室左室収縮期拍出量比(RVSO/LVSO)を求めた. 正常群におけるRVSO/LVSOは0.87~1.28(1.08±0.15)(平均±標準偏差)であったのに対し, ASD群におけるそれは1.26~3.41(2.45±0.66)であった. 右室収縮期拍出量(RVSO)は肺血流量と, 左室収縮期拍出量(LVSO)は体血流量と等しい値であるため, 両者の比であるRVSO/LVSOと, Fick法より求めた肺体血流量比(Qp/Qs(Fick))とを対比したところ, 両者が一致しない症例が存在した. 特に手術適応決定の上で問題となったQp/Qs(Fick)1.8未満の6例におけるRVSO/LVSOは1.26~3.41であった. このうち手術を施行した4例中2例のQp/Qs(Fick)は1.51, 1.53であったが, 欠損孔を楕円形と考えて計算した短絡路面積/体表面積はそれぞれ3.02, 2.75cm2/m2と大きく, これらのRVSO/LVSOはそれぞれ3.41, 2.98で高肺血流量群と考えられ, 臨床症状, 胸部単純X線所見ともよく一致した. 一方Qp/Qs(Fick)1.62の1例では, 短絡路面積/体表面積は0.70cm2/m2と小さく, RVSO/LVSOは1.26で, 肺血流量の増加は軽度であったと考えられた. 肺体血流量比を心血管造影法より求めることは, 本症の肺循環動態の評価の上で有用な方法であり, Qp/Qs(Fick)の値のみに依存した手術適応の決定よりも正確なものになし得ると考えられた. |