Abstract : |
肺内転移について, 剖検例に関するものはみられるが, 手術例に関するものは少ない. これは肺内転移が遠隔転移として, 手術適応から除かれるからである. しかし実際には手術時に肺内転移を認めることがある. このような肺内転移の転移経路や予後についていまだ不明の点が多い. 今回我々は, 1980年12月まで癌研病院で行った肺癌肺切除例350例中, 切除肺の肉眼的及び組織学的検索から肺内転移を認めた18例を対象として肺内転移に関する検討を行った. 1. 肺内転移は350例中18例に認めその頻度は5.1%であった. 18例中転移巣が主病巣と同じ肺葉内にある同一肺葉群は12例, 他肺葉に及ぶ他肺葉群6例であった. 2. 肺内転移の肉眼的転移個数をみると, 転移個数1個の症例は7例で全例同一肺葉群であった. 2個の症例は2例, 3個以上は9例であった. 3. 組織型では腺癌が11例と多く特徴的である. また他肺葉群6例中5例は腺癌であった. 扁平上皮癌は3例でいずれも同一肺葉群であった. 4. 肺内転移は淋巴節転移が全くなかった例にもみられるが, 縦隔淋巴節転移陽性の場合に肺内転移が増す傾向がみられた. 5. 肺内転移例の予後は悪く, 18例中1例のみが5年以上生存したにすぎない. しかし術後2年1カ月で呼吸不全により死亡, 死後剖検により癌遺残を認めなかった症例を経験した. この2例はいずれも扁平上皮癌で且つ主病巣と同一肺葉内の肺転移例であった. 6. 肺内転移はそれが主病巣と同じ肺葉内にあり, 且つ縦隔淋巴節を認めない場合には外科療法の適応と考えたい. 扁平上皮癌の場合にはある程度予後が期待できると思われる. |