アブストラクト(31巻12号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : Persistent Atrioventricular Canalの遠隔成績 -特に僧帽弁裂隙処理の問題点について-
Subtitle :
Authors : 須藤憲一, 水野明, 古瀬彰, 進藤剛毅, 高山鉄郎, 柳生邦良, 浅野献一
Authors(kana) :
Organization : 東京大学医学部胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 31
Number : 12
Page : 2138-2145
Year/Month : 1983 / 12
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 1959年より1982年5月までに当科において施行された不完全型総房室弁口遺残(以下A-V canal)は52例であり, 前期(1959, 6~1977, 5)に比較し, 後期は手術死亡率は低下している. しかし, 前期, 後期を通じ, 手術方法はほとんど変化なく, また術後, 重篤な症状, 特に僧帽弁逆流に悩まされる患者も少なくなく, 単に手術死亡率の低下をもって現在の手術法に満足することはできない. そこで前期の症例の遠隔成績をアンケート調査, 外来検査により検討し, 最も問題となると思われる僧帽弁裂隙処理法の検討を試みた. 前期の手術総数は44例であり, 手術死亡18例を除く26例を対象とした. 遠隔死亡は5例あり, このうち3例は僧帽弁逆流によるものであった. 遠隔予後不明例は3例であった. これらを除いた18例の手術時年齢は5~29歳(平均16.7歳)であり, 術後経過期間は5~22.9年(平均14.1年)であった. 術後生存率は15年で80.3±8.1%であった. 再手術例(僧帽弁置換術)が1例あり, 強心剤を服用中の症例が4例, 自他覚症状のはっきりしている症例が8例であった. これらを除いた術後無症状生存率は15年で56.4±9.8%であった. 無症状群(I群)と症状群(II群)において超音波による左房径, 胸部X-Pによる心胸郭比及び心尖部収縮期雑音の比較を行ったが, 左房径はI群23.4±4.6, II群は34.3±1.3と有意差が見られたが, 心胸郭比では有意差は見られなかった. 心雑音はII群に強い傾向を示した. 従来, 僧帽弁逆流の評価は左室造影以外に決定的なものがなかったが, 超音波検査における左房径の比較は, 僧帽弁逆流を主とするA-V canalの術後遠隔成績の判定に有用であると思われた, 僧帽弁裂隙に対する手術操作をクレフト放置群(A群), 縫合群(B群), パッチ形成群(C群)に分け, 同様の比較を試みたが, 左房径, 心胸郭比ともに有意差はみられなかった. 心雑音に関してはB群に強い傾向が見られた. また遠隔死亡5例のうちB群に相当するものが3例, C群に相当するものが2例あったことも注目に値する. すなわち術後僧帽弁逆流の程度は僧帽弁病変の強さにあることは言うまでもないが, それに加えた手術手技がそれほど効果をあげなかった症例が少なくなかったと言える.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : Persistent common atrioventricular canal, 遠隔予後, 術後生存率, 僧帽弁裂隙, 僧帽弁逆流
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