Abstract : |
術中自家輸血の臨床応用はいまだ広く普及していない. 他家輸血の節約, 他家輸血による輸血反応, ウイルス感染, 大量他家輸血による種々の合併症などを考えると, 大量出血が予想される手術における術中自家輸血は非常に有用な方法である. 我々は自家輸血装置を独自に考案して大血管手術に積極的に使用しているが, 一時的体外バイパスを補助手段とした胸部大動脈瘤手術8例に術中自家輸血を施行して特にその有用性を確認した. 胸部大動脈瘤は弓部1例, 下行3例, III型解離3例, 胸腹部1例で, 全例に一時的体外バイパス下に人工血管置換術を施行した. 自家輸血装置は吸引管, cardiotomy reservoir, Swank filterを用い, 吸引と送血にはroller pumpを使用した. 結果は, 術中総輸血量の半分近くを自家輸血でまかなうことができた. 溶血, 止血機能, 腎機能, 微小塞栓などに特に問題はなく, 安全に術中自家輸血が施行し得た. 胸部大動脈瘤手術において, 特に下行大動脈の病変に対し, 術中自家輸血と一時的体外バイパスを補助手段として用いる方法は非常に有用な一手術法と考える. |