アブストラクト(31巻12号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 陳旧性胸膜炎に進行性胸腔内出血病変を併発した症例の臨床的検討
Subtitle :
Authors : 原田邦彦1), 谷木利勝1), 吉沢潔1), 井上権治1), 長野貴2)
Authors(kana) :
Organization : 1)徳島大学医学部第2外科, 2)徳島県立中央病院
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 31
Number : 12
Page : 2152-2158
Year/Month : 1983 / 12
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 過去に結核性胸膜炎などに罹患し, 膨脹不全の状態で10年以上の長期間経過しているうちに, 何らかの原因で胸膜に出血性病変が発生し, 慢性経過で出血を繰り返し巨大な血腫となり, 縦隔は変位し, 対側肺は圧迫されて呼吸不全に陥り, 放置すれば予後不良な経過をとる, 慢性膿胸あるいは胸膜炎の特殊型と考えられる1群の疾患を7例経験したのでその臨床像を検討した. 胸部X線像では患側胸部は不透明化し, 特に下半部では圧排性に陰影が拡大し, 胸壁に沈着している鎧状の石灰化像は上部で著明に多く, 下部胸壁では, しばしば薄くなっている. この下部胸腔を穿刺すると無制限に, 抵抗なく純血液が吸引され, あたかも大血管を穿刺した感じである. しばしば, 気管支痩や胸壁痩を形成して喀血や出血が続く. 進行性に血腫が増大するために対側肺は圧迫され, 呼吸不全, CO2ナルコージスを起こすに至る. 減圧のために開胸して血腫除去をすると, 上部胸腔では血腫塊の表面は平滑で遊離除去できるが中下部胸腔では血腫が胸膜と癒合し器質化しており, これを掻爬すると夥しい毛細管性出血が起こり止血し難い. 組織的には胸膜の線維性被膜の一部に断裂部が散見され, 血腫はこの部を通じて胸膜内外に連続した状態にある. また血腫は器質化した大きい白色化したもの, 内部は黒褐色の脆い血腫塊など種々の時期のものがみられ, 胸膜に接して新しい血腫もある, 胸膜に近い血腫内には新生血管が多数に認められ, 一部では血管腫様に拡張した部分もある. この現象は血管内血栓への新血管の再疎通現象と同じに思われた. 治療としては胸膜肺全切除術が唯一の有効な治療と考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 膨脹不全肺, 慢性胸腔内出血, 線維性被膜断裂, 血腫内血管新生, 呼吸不全
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