アブストラクト(31巻12号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 開心術前後の血行動態並びに内分泌学的変動 -虚血性心疾患及び僧帽弁膜症について
Subtitle :
Authors : 田中國義, 長坂裕二, 森本保, 大井勉, 草川実
Authors(kana) :
Organization : 三重大学医学部胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 31
Number : 12
Page : 2159-2166
Year/Month : 1983 / 12
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 当教室で施行した成人開心術症例20例を対象とし, 虚血性心疾患群(A群, 11例), 及び僧帽弁膜症群(B群, 9例)の2群に分け, それぞれの術中術後の血行動態, 内分泌学的変動を検索し, 以下の結果を得た. 1回拍出係数についてみると, 麻酔導入前はA群44±12ml/beat/m2, B群36±14ml/beat/m2とA群が高い. 人工心肺離脱後は, A群では低温が続き, 24時間経過しても術前値へは回復しなかった. B群では病棟帰室3時間後には術前値へ回復した. 2. 全末梢血管抵抗についてみると, 麻酔導入前は, 両群ともほぼ同じ値であるが, 人工心肺離脱後, A群では高値が続き, 術前値へ回復するのは病棟帰室6時間以降であった. B群では帰室時には, 術前値へ低下した. 3. 血中catecholamineの変動は, epinephrineが麻酔導入前A群111±64pg/ml, B群49±20pg/ml, norepinephrineがA群207±173pg/ml, B群167±66pg/mlと, ともにA群の方が高い. 手術侵襲, 人工心肺による上昇もA群において著明で, 術前値への低下も病棟帰室6~9時間以降であった. B群ではA群に比べ軽度の上昇にとどまり, 帰室時には術前値へ低下した. 4. Renin-angiotensin系についてみると, reninは, 麻酔導入前A群1.6±0.7ng/ml/hr, B群9.1±6.3ng/ml/hrとB群が有意に高く, 術中術後もB群が有意に高値を維持した. Angiotensin I及びII, aldosteroneについても, ほぼ同様であった. 5. 尿Na/K比についてみると, 術中から帰室3時間後まで, B群がA群に比し低い傾向を示し, 高aldosterone血症の存在を示唆した. 以上の結果は, 虚血性心疾患における低心拍出状態の原因として, 交感神経系過剰反応による末梢血管抵抗の増大が存在し, また, 僧帽弁膜症における電解質代謝の異常には, 術前からのrenin-angiotensin-aldosterone系の賦活化が大きな影響をもつことを示唆するものと考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 開心術, 僧帽弁膜症, 虚血性心疾患, catecholamines, renin-angiotensin-aldosterone系
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