Abstract : |
開心術に際し, 適切な抗生剤の予防的投与を行うべく, 1. 開心術後感染症, 2. 各種臨床材料から得られた分離菌の推移, 3. 使用抗生剤の感受性などにつき検討を加えた. また抗生剤CTM 1gを術前静脈内投与し, 右心耳, 心嚢液への移行を検索した. 対象症例は, 術中術後抗生剤投与を行ってきた1981年7月から12月までの60例と, それに術前抗生剤投与を加えた1982年1月から6月までの73例である. 1. 開心術後感染症は, 術前抗生剤投与群において, 呼吸器感染症が5%以下の有意差で減少しており, 菌血症, 尿路感染症は0%となっている. 2. 術後各臨床材料からの菌検出率をみると, 術前投与群では, 尿と喀痰からの検出率が1%以下の有意差を持って減少しており, 血液, 胸腔ドレーンでは, 両群間に有意差を認めなかった. 臨床分離菌の推移では, すべての臨床材料においてPs. cepaciaを始めとしたブドウ糖非発酵菌, 表皮ブドウ状球菌Serratiaなどの増加傾向が見られた. 3. 臨床分離菌と使用抗生剤の関係を薬剤感受性の上からみると, PIPCとアミノ糖系薬剤あるいは, アミノ糖系とセフェム剤の組み合わせにより, ほとんどの分離菌のカバーが可能であった. またPIPCとCEZの組み合わせによる術後投与により, 統計学的有意差はないものの, すべての臨床材料からの菌検出率が減少傾向を示した. 4. 術前抗生剤(CTM 1g)投与により, 良好な心筋組織と心嚢液内への移行が認められた. また投与90分前後で血清濃度が描く放物線が交叉する型となり, 三者の有効な濃度を維持するためには開胸操作を行う90分以内の本剤の投与が適切であろうと考えられた. |