アブストラクト(32巻1号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 開心術後感染症及び術前, 術後抗生剤投与に関する検討
Subtitle :
Authors : 弘岡泰正, 忽滑谷通夫, 大瀬良雄, 田中淳
Authors(kana) :
Organization : 順天堂大学医学部胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 32
Number : 1
Page : 1-7
Year/Month : 1984 / 1
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 開心術に際し, 適切な抗生剤の予防的投与を行うべく, 1. 開心術後感染症, 2. 各種臨床材料から得られた分離菌の推移, 3. 使用抗生剤の感受性などにつき検討を加えた. また抗生剤CTM 1gを術前静脈内投与し, 右心耳, 心嚢液への移行を検索した. 対象症例は, 術中術後抗生剤投与を行ってきた1981年7月から12月までの60例と, それに術前抗生剤投与を加えた1982年1月から6月までの73例である. 1. 開心術後感染症は, 術前抗生剤投与群において, 呼吸器感染症が5%以下の有意差で減少しており, 菌血症, 尿路感染症は0%となっている. 2. 術後各臨床材料からの菌検出率をみると, 術前投与群では, 尿と喀痰からの検出率が1%以下の有意差を持って減少しており, 血液, 胸腔ドレーンでは, 両群間に有意差を認めなかった. 臨床分離菌の推移では, すべての臨床材料においてPs. cepaciaを始めとしたブドウ糖非発酵菌, 表皮ブドウ状球菌Serratiaなどの増加傾向が見られた. 3. 臨床分離菌と使用抗生剤の関係を薬剤感受性の上からみると, PIPCとアミノ糖系薬剤あるいは, アミノ糖系とセフェム剤の組み合わせにより, ほとんどの分離菌のカバーが可能であった. またPIPCとCEZの組み合わせによる術後投与により, 統計学的有意差はないものの, すべての臨床材料からの菌検出率が減少傾向を示した. 4. 術前抗生剤(CTM 1g)投与により, 良好な心筋組織と心嚢液内への移行が認められた. また投与90分前後で血清濃度が描く放物線が交叉する型となり, 三者の有効な濃度を維持するためには開胸操作を行う90分以内の本剤の投与が適切であろうと考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 開心術後感染症, 抗生物質, 薬剤感受性, 心筋組織内濃度, 心嚢液
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