Abstract : |
肺癌手術において廓清困難な反対側縦隔の転移リンパ節に対する対策として, 実験的に左右縦隔リンパ流の中心である気管分岐部リンパ節に種々の閉塞物質(食道静脈瘤栓塞療法1)に用いられる5%sodium morrhuate)を注入することにより, 反対側縦隔へのリンパ流を対照群と比較して有意の差(開胸下注入p<0.01, 経気管支直達鏡下注入p<0.05)で遮断することが可能であった. リンパ系着色には良質墨汁を用いた. 閉塞物質に制癌剤[Bleomycin(以下BLMと略す)]を溶解して注入した場合でも, 反対側縦隔へのリンパ流が対照群と比較して有意の差(p<0.01)で遮断されるとともに両側の縦隔リンパ節への制癌剤の移行が制癌剤単独のみの注入群と同様か又はそれ以上に認められ, 肺癌症例におけるリンパ流遮断並びに経リンパ性制癌剤投与の可能性が証明された. リンパ流遮断と経リンパ性制癌剤投与の方法は, 肺癌において縦隔リンパ節に転移を認める症例(以下N2症例と略す)に術前又は術中併用すれば, 1. 反対側へのリンパ節転移の防止, 2. 反対側の転移リンパ節への高濃度の制癌剤の移行が可能であるので外科治療成績を向上させるためのadjuvant therapyとして有意義な方法であると考える. |