アブストラクト(32巻2号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 自家肺動脈弁同所性移植の実験的研究
Subtitle :
Authors : 村田紘崇
Authors(kana) :
Organization : 大阪大学医学部第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 32
Number : 2
Page : 144-153
Year/Month : 1984 / 2
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 修復不可能な大動脈弁に対する手術法の1つとして, 自家肺動脈弁による大動脈弁置換術がある. 本法では移植弁は新鮮な自己の組織であることから, 生着すれば生涯良好な弁機能を営み得ることが期待される. しかし遠隔期における大動脈弁領域へ移植された自家肺動脈弁の弁機能については不明な点が多い. そこで自家肺動脈弁による大動脈弁置換術後の弁の生着の有無を検討するため, 次のモデル実験を行った. すなわち8頭の幼犬に対し単純超低体温法を用いた循環停止下に自家肺動脈弁をいったん切除し, 直ちに元の所へ縫着して自家肺動脈弁同所性移植とし, 長期間飼育して弁の発育状態, 機能, 組織学的変化などを検討した. 対照として3頭において新鮮同種肺動脈弁による同所性肺動脈弁置換を, 同じ方法によって行い, 同様の観察を行った. 8頭全例を術後4~16ヵ月目, 平均8.9±4.9ヵ月目にカテーテル検査, 心血管造影の後, 犠牲死せしめ, 弁を肉眼的, 組織学的に観察した. 対照犬では1頭は3ヵ月後に右心不全症状で死亡し, 他も長期生存させることは困難で術後3~5カ月後に犠牲死せしめ同様の観察を行った. 右室肺動脈幹の間の圧差は0~21mmHg, 平均7±8mmHgであったが, 血管造影所見, 剖検所見よりみて吻合部に生じた圧差と考えられた. 対照例2例では21及び71mmHgの圧差があり, 弁狭窄によるものと思われた. 対象例の弁輪径は移植時の7.5±0.5mmから13.4±2.6mmと発育しており, 剖検時に測定した大動脈弁輪径との差は0~1mmであった. 一方対照例のそれは全く成長しておらず, 移植時と同じ大きさにとどまった. 自家移植弁は柔らかく, 肉眼的に正常の外観を呈し, 組織学的にも正常の構造を保っていた. 対照例では移植弁は短縮肥厚し, 組織学的には弾力線維, 膠原線維の減少がみられ, 弁機能不全を来していることは明らかであった. 以上, 同所性に移植した自家肺動脈弁は成長し, 正常の肉眼的, 組織学的所見を呈し, 正常に機能しており, 生着していることを明らかにし得た.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 自家肺動脈弁移植, 大動脈弁置換術, 生物弁
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