アブストラクト(32巻3号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 肺癌細胞の核DNA量と臨床的並びに組織学的悪性度表現との関連
Subtitle : 原著
Authors : 室田欣宏, 山口豊, 藤沢武彦, 大塚俊通*
Authors(kana) :
Organization : 千葉大学肺癌研究施設外科, *中央鉄道病院胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 32
Number : 3
Page : 283-293
Year/Month : 1984 / 3
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 原発性肺癌90例の切除材料を用い, 肺癌細胞の核DNA量を測定し, そのヒストグラムパターンを3群(A群:核DNA量が4C以内を示す癌細胞数が50%以上の症例, B群:核DNA量が4C~8Cを示す癌細胞数が50%以上の症例, C群:核DNA量が8C以上を示す癌細胞数が50%以上の症例)に分類し, 組織型, 組織分化度といった組織学的悪性度指標, 病期分類, 手術根治度といった臨床的悪性度指標, 並びに所属リンパ節のMLTR(Mixed lymphocyte tumor cell reactivity)といった免疫学的悪性度指標との対比を行い, 核DNA量の悪性度指標としての有用性を検討し, 合せて予後との関連も検討した. 組織型との関連はみられなかったが, 小細胞癌ではA群の占める頻度が他の組織型より高い傾向がみられた. 組織分化度との関係は, 扁平上皮癌では相関関係がみられたが, 腺癌ではみられなかった. 病期分類との関係ではA群はI期例が多く, C群はIII期症例が多かった. 手術根治度との関係ではA群は治癒手術が多く, C群は非治癒手術が多かった. 所属リンパ節のMLTRとの関係では, B群では原発巣の腫瘍径が3~5cmの群では原発巣に近位のリンパ節の反応性が高いが, 5cm以上になると, 遠位のリンパ節の反応性が高くなり, 腫瘍の増殖により宿主の抗腫瘍性のバリヤーの遠位への移動がみられるが, C群では3~5cmの群でも既に遠位リンパ節の反応性の方が高くなっており, C群の方がB群より早期の時期に近位所属リンパ節の反応性を抑制することが示唆された. また, 予後との関係では, A群の術後5年生存率は40%, B群のは63%, C群のは34%であった. 以上, 組織の核DNA量の測定は腫瘍中の一部の悪性細胞の測定を行っているのに過ぎないが, 肺癌細胞の悪性度を示す有用な指標の1つであると考えられる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 核DNA量, MLTR, 原発性肺癌, 癌抗原, 悪性度
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