| Authors ： |
川田志明, 金渕一雄, 鈴木一郎, 福田崇典, 稲村俊一, 小川純一, 井上宏司, 小出司郎策, 正津晃 |
| Abstract ： |
胸部下行大動脈瘤手術の補助手段としては, 人工血管などを用いた一時的体外バイパス法のほか人工心肺を用いた部分体外循環法などが挙げられ, その利点, 欠点が論義されている. また, 下行大動脈瘤手術では膨脹肺がしばしば手術野を妨げ, 無理な圧排によって心・肺機能に大きな変動を与え, 手術操作の中断を余儀なくされることもある. 我々は最近の胸部下行大動脈瘤手術に際しては, 大腿静動脈バイパス(V-Aバイパス)を用いて大動脈遮断中の中枢側血圧調節, 末梢側血流維持に努め, これに主気管支ブロックを導入して左肺の完全虚脱下に人工血管置換術を行い, 満足すべき成績を得たので報告する. 昭和50年8月から58年2月までに手術を実施した胸部下行大動脈瘤は28例であり, III型解離性12例, 動脈硬化性で紡錘状9例及び嚢状7例に分類された. 初期の9例では, 人工血管あるいはGottのチューブによる一時的体外バイパスを用い, その後low porosity人工血管が入手できるようになってからは大腿静動脈間の部分体外循環(V-Aバイパス)を原則として利用することとし, 連続して17例に実施した. このうち最近の12例には可動性ブロッカー付気管内チューブによる左主気管支ブロックを導入した. 補助手段別に手術成績をみると, 一時的体外バイパス法を用いた9例中2例, V-Aバイパス法の17例中1例を失い, 全症例28例中3例(10.7%)の手術死亡をみた. |
