アブストラクト(32巻3号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : Fontan型手術後の右心系の血流速度波形の分析
Subtitle : 原著
Authors : 中沢誠, 里見元義, 奥田浩史, 中江世明*, 今井康晴*, 高梨吉則*, 金谷真弓, 高尾篤良, 小柳仁*
Authors(kana) :
Organization : 東京女子医科大学日本心臓血圧研究所小児科, *東京女子医科大学日本心臓血圧研究所外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 32
Number : 3
Page : 338-348
Year/Month : 1984 / 3
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : Fontan型手術後の5例を対象に, 流速カテーテルによる右心内血流速度波形の分析を中心に, その血行動態を検討した. 右房肺動脈直接吻合術後の例では, 心房収縮による圧上昇は, 主肺動脈(m-PA), 上下大静脈(SVC, IVC)によく伝えられた. このとき, m-PAでは順方向の波(A波), IVCでは逆方向の波が記録され, SVCではそれまでの連続した順方向の流れが中断するか, わずかな逆方向の血流を記録した. 心房の収縮が終わると, m-PAの血流はいったんほとんどなくなる. IVCで急速に順方向の流れに変わり, SVCでは順方向の流れが再開する. これはあたかも心房の収縮によってせき止められた血流が, その弛緩拡張とともに一気に心房へと流れ込むようにみえる. IVC, SVCからのこの流れは, 右房拡張に伴う容積増大に費やされ, 肺動脈へは達しないが, 肺動脈右房逆流を防ぐ効果(生理学的肺動脈弁とでも呼べるか)を発揮する. その後ゆっくりした静脈還流がみられ, これはm-PAでも記録された(D波). 右房右室流出路吻合術後の例ではm-PAで, A波のあとに, 心室収縮に一致した順方向の血流(V波)が記録された. isoproterenol負荷によって, m-PAでのA波, D波ともに増高し, IVCへの逆流も流速を増した. すなわち, 本手術後, 右房の収縮は肺循環へ拍動流を押し出すのに役立っていることが直接示された. 左室拡張末期容積は110±25(SD)%of normal, 駆出率は0.53±0.08であった. 右下最大容積は1例で正常の約3倍であった以外77~136%とほぼ正常で, 収縮による容積変化率(駆出率と同様に算出)は0.18~0.30であった. 右房容積特性と心拍出量とは一定の関係を示さなかった.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 三尖弁閉鎖, Fontan型手術, 心腔内血流速度, isoproterenol負荷, “せき止め効果”
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