Abstract : |
過去26年間に経験した, 先天性心疾患に対する人工心肺を使用しての直視下心内手術約3,000例中, 10例(0.3%)に, 術後重症三尖弁閉鎖不全(TR)の発現をみた. これら対象の年齢は, 5~24歳(平均15歳)で, NYHA重症度分類ではIII度が2例, IV度が8例であった. 手術法別ではファロー四徴症根治2例, 心室中隔欠損閉鎖6例(パッチ4例, 直接2例), 右室流出路異常筋束切除1例, 心室中隔楔状切開1例であった. 10例中3例は再手術前に失い, 7例に対し再手術を施行したが, 早期死1例, 晩期死2例で, 現在生存は4例である. 初回手術前のCTRは55.9±5.3%(n=9)より74.9±7.3%へと増加しており, 心電図上, 全例が両室肥大と完全右脚ブロックを呈していた. また完全房室ブロック1例, 心房細動3例をみた. 右心カテーテル検査では, TR出現後の右房v波は22.9±8.8mmHg(n=8), 右室収縮期圧は58±30.4mmHg(n=8)で, 測定し得た右室拡張末期圧は, 13, 18, 19, 22mmHgであった. 原因別では, 感染性心内膜炎によるもの3例, 続発性TR 3例, 外科的損傷によるTR 4例であり, いずれも右室切開により心内修復が行われていた. 術中の三尖弁の状態は弁尖の癒合と退化3例, 弁尖の穿孔2例, 中隔尖の腱索断裂2例であった. 手術術式別では, 三尖弁置換術(TVR)1例, VSD再閉鎖と三尖弁形成術(TAP)2例, VSD再閉鎖とTVR 2例, VSD再閉鎖+TAP+肺動脈弁交連切開術1例, 左室・右房交通孔閉鎖+TVR 1例である. また三尖弁手術前に1例, 手術後2例に房室ブロックのためPM植え込みを行った. これらTRは進行性で, 右心不全や心房細動の進行しない以前に, 外科治療を行う必要がある. 弁の荒廃の進んだ症例にはbioprosthesisを中心とするTVRを行うが, この場合長期にわたり, 不整脈に対する観察が必要である. このため予防的心筋電極の植え込みも考慮すべきである. |