Abstract : |
右上大静脈欠損兼左上大静脈遺残を伴う心房中隔欠損症の手術を経験した. 外来心エコー検査にて, 左上大静脈遺残を伴う心房中隔欠損症と診断し, 入院後は更に, コントラストエコー法及び心カテ, アンギオ方法を施行し, 右上大静脈欠損を伴うものと確認した. この手術の問題点は, 冠状静脈洞調律の温存にあった. 左上大静脈遺残を伴う心疾患では, 心電図上, 冠状静脈洞調律のことが多い. そのうえ右上大静脈欠損を伴うと, 正常洞結節が多くの場合, 低形成であり, 冠状静脈洞調律の頻度は更に多いとされる. 従って, 心房中隔欠損の閉鎖に際し, 正常洞調律がもともと期待できないので, 冠状静脈洞が傷害されると, sick sinus syndromeは容易に惹起されると予測される. 手術は冠状静脈洞に傷害を与えないように慎重になされることが必要と考えられた. 大静脈系の還流異常を伴った心疾患の手術経験は数多く報告されている1)~7). このうち, 左上大静脈遺残(以下PLSVC)を伴ったものは, 最も頻度の高いものとされ(心疾患の約3~4%8)9)), 心電図, 胸部x線, 超音波検査法, 心カテ, アンギオ法などにより, 手術に至る前に発見されることが多い. |