アブストラクト(32巻6号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : Potassium Cardioplegiaにおけるverapamilの心筋保護効果―その陰性変力作用との関連―
Subtitle : 原著
Authors : 鈴木安広
Authors(kana) :
Organization : 埼玉医科大学第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 32
Number : 6
Page : 903-912
Year/Month : 1984 / 6
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 本研究では, 2時間22℃の大動脈遮断において, 高K+心停止液における, 各種濃度のverapamil添加の影響を, 電顕及び心血行動態の面から, 特に心筋保護効果と陰性変力作用の関係について検討した. 雑種成犬25頭を用い, 高K+(28mEq/l)心停止液中のverapamil濃度により, I群:0mg/l 6頭, II群:0.1mg/l 6頭, III群:0.5mg/l 7頭, IV群:2.0mg/l 6頭の4群に分けた. 平均大動脈圧75mmHg, 心拍数一定の条件で右心バイパスを行い, 左室心仕事量, max dp/dt, t-peak dp/dt, 左室segmental lengthの%shortening, 左室拡張末期圧を測定した. その後, 心筋温22℃まで冷却して, 大動脈遮断し, 心停止液を初回は250ml, 以後30分ごとに100mlづつ注入し2時間の心停止を得た. 再灌流40分後に同様の測定を行い, その回復率をパーセント標示した. また, 左室心筋生検を, 心停止前, 心停止中, 再灌流30分後に施行し, 電顕の試料とした. Sarnoff curveにおける左室機能の回復率は, I群29.9±10.2(mean±S.D.)%, II群43.8±18.9%, III群43.3±12.0%, IV群52.9±23.4%で, III群はI群に比べ有意に回復率が良かった(p<0.05). myocardial contractilityの指標としてのmax dp/dtは, I群81.1±32.3%, II群88.7±17.1%, III群72.7±15.0%, IV群68.3±32.0%の回復であり, verapamil増量とともに低下傾向を示した. t-peak dp/dtはIV群で135.3±22.5%と有意に延長した(p<0.05). 心拍出力の一指標である%shorteningは, verapamil群でもI群と同様に保たれていた. verapamil増量とともに自然拍動再開後A-V blockの継続時間が延長した. 左室心筋の電顕では各群とも良好な心筋保護効果を示した. 以上より得た結論は, (1)verapamil0.5mg/lには, 有意な心筋保護効果があり, 臨床応用に適量であろうと示唆された. (2)verapamilはcardioplegiaにおいて, 心臓ポンプ作用を保存する心筋保護効果と, myocardial contractilityを抑える陰性変力作用が併存する. (3)電顕上, 各群とも良好な心筋保護効果を認めた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : Ca拮抗剤, Verapamil, 心筋保護効果, 陰性変力作用, Potassium Cardioplegia
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