| Authors ： |
稲田洋, 勝村達喜, 藤原巍, 土光荘六, 元広勝美, 佐藤方紀, 木曽昭光, 正木久男, 野上厚志, 中井正信 |
| Abstract ： |
川崎医科大学胸部心臓血管外科において過去8年間に経験した胸部大動脈瘤は44例であり, うち26例に手術を施行し手術死亡率は34.6%で生命表法による術後8年累積生存率は53.2%(Standard Error=0.099)であった. 手術例の内訳は上行, 弓部, 下行, 解離性大動脈瘤各々5, 5, 12, 4例であった. 術後生存例と手術死亡例で入院時合併症の頻度, 1症例当たりの合併症保有数, 手術時間, 大動脈遮断時間, 術中出血量に統計学的有意差は認められなかったが, 平均年齢は有意差をもって前者が若年であった. 術後早期合併症としては脳障害, 出血が多く, 手術死亡原因としては出血が45%, 急性腎不全が33%と多数を占めていた. また遠隔期死亡原因として手術例, 非手術例ともに残存動脈瘤破裂が認められた. 術後生存例と手術死亡例の比較, 術後早期合併症, 手術死亡原因, 及び遠隔予後の検討から, より一層の手術成績の向上を計るため高齢者に対する注意深く慎重な管理, 症例によっては簡単且つ容易な手術方法の採用, 術中の愛護的な大動脈の操作, 出血を減少させる手術手技の改良, 工夫, 動脈瘤を可及的に残存させないことなどが必要であると考える. |
