アブストラクト(32巻8号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 心疾患術後死亡例の腎変化についての病理組織学的研究
Subtitle : 原著
Authors : 田村浩一
Authors(kana) :
Organization : 日本医科大学第2外科, 日本医科大学第1病理
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 32
Number : 8
Page : 1151-1162
Year/Month : 1984 / 8
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 心疾患手術後の剖検例42例の腎臓について病理組織学的検討を加えた. 各症例は, 腎組織像に影響を及ぼす要因の多種多様さにもかかわらず, 基本的には, 循環障害の強さと術後の時間経過に対応した変化を示した. 血液分布異常を基盤とし, 経時的に尿細管の変性・間質浮腫などの増強を示すショック腎(SK)型は11例にみられたが, 一般ショック例に比して初期像が遷延しており, low output syndrome(LOS)の影響と治療効果の関連が考えられた. 高度の循環障害を示す, 腎皮質壊死(CN)は2例に, 急性腎梗塞(INF)は3例にみられた. これらでは, 壊死巣の糸球体の血液充満と, 細動脈のフィブリノイド壊死, 拡張性破壊性変化などが認められ, その発生機序として, 腎循環機能失調が主要因となっていることを示していた. 更に従来着目されていなかった, 糸球体を中心とした溶血性血液うっ滞を特徴とする糸球体血行静止(Gl-S)型は10例あり, このなかに急死による血管麻痺像のほかに, 体外循環やショックによる腎虚血後にreflowが加わった結果としてのうっ滞とみなされるものがあった. これらの例の細動脈壁には, 血液浸淫を始めとする内圧亢進性-Dysorie性変化が生じており, CN, INFに通じる変化として, 腎循環機能失調説を裏づけるものと考えられた. 急性尿細管壊死(ATN)の5例中ischemiaを基盤にした3例は, 臨床的に高度のhypoxiaを伴っており, 近位尿細管がhypoxiaにより障害され易い特性をもつことが示唆された. 滲透圧性腎症(Osm)型では, 体外循環との関連を示唆するものがあったが, その発生には更にLOSを始め近位尿細管の再吸収物質処理能力を低下させる要因が加わっていた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : Postoperative Complication, Acute Renal Failure, Shock Kidney, Acute Tubular Necrosis, Cortical Necresis
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