Abstract : |
ダウン症を伴う先天性心疾患26例を対象として肺の気道系の組織所見を検索し, 術後の呼吸不全の原因について検討した. ダウン症では術後の肺組織に間質の気腫, 末梢気道の拡張, 肺胞壁の形成不全を特徴的に認めたが, 対照の非ダウン症にはそれほど存在せず, 本症に特有の病理組織所見と考えられた. 同一症例で心手術前後の生検肺所見を比較してみると, 肺胞壁の形成不全は両者に認めたものの, 間質の気腫, 末梢気道の拡張は心手術前の生検肺にはほとんど認めなかった. 従って, ダウン症では先天的な肺胞壁の形成不全があり, 手術時麻酔中の気道内加圧によって末梢気道が拡張し, しばしば間質の気腫まで引き起こしてしまうと考察された. alveolar septitisはダウン症, 非ダウン症に同程度に存在し, ダウン症に特有の病変とは考えられなかった. 以上述べた気道系病変, すなわち, 間質の気腫, 末梢気道の拡張, 肺胞壁の形成不全, 及びseptitisの程度はweaningまでの時間と相関し, ダウン症で術後しばしばみられる呼吸不全の原因と考察された. 従って麻酔や人工呼吸器による気道内加圧は十分な注意が必要であると結論された. |