| Authors ： |
松倉裕美, 合田俊宏, 立木利一, 鵜沢茂樹, 竹田治土, 松波己, 川上敏晃, 田辺達三, 村松宰* |
| Abstract ： |
Hollow Fiber型肺, ローラーポンプを用い落差脱血, 上行大動脈送血, one pump systemでラクトリンガー液希釈, CPD血使用下に最終希釈率が30%程度となる軽度低体温高流量灌流を行った体外循環症例52例を対象に, 術後7病日までの術中, 術後血液成分の変化を追跡し, 胸部及び腹部大動脈瘤手術例と比較検討し, 術後異常出血再手術について考察した. その結果次の結論を得た. (1)体外循環開始までの手術操作により各血液成分は著明な変化を受け, しかも各々独自の減少率で低下した. (2)体外循環希釈率に一致して減少をみた血液成分はフィブリノーゲンとAT-IIIのみであり, ヘモグロビン値は希釈率以下の低下にとどまり, 血小板数は希釈率以上の減少を示した. (3)帰室時以降ヘモグロビン値は入院時と差を認めず十分な輸血がなされたことを示したが, 血小板数の回復には7病日を要した. (4)体外循環中低下した血小板凝集能は帰室時以降正常値を示したが, 血小板粘着能は体外循環中変化せず, 帰室時及び1病日は亢進した. (5)フィブリノーゲンは1病日以降過剰増加を示したが, 体外循環中26μg/mlまで異常増加を示したFDPは帰室時以降正常値を回復した. (6)AT-III及びトロンボテストは帰室時以降正常値を示した. (7)一時的バイパス下に手術した胸部大動脈瘤及び大動脈遮断下に手術した腹部大動脈瘤と体外循環症例を比較すると術後血液成分の回復過程に著明な差はみられなかった. (8)体外循環術後異常出血再手術例は大量輸液及び輸血による血液稀釈と凝固線溶亢進の組み合わさった複雑な血液性状を呈していた. |
