アブストラクト(32巻10号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 胸部下行大動脈瘤手術における脊髄障害発生予防のための術中体性感覚誘発電位(SEP)の測定 ―その有用性と問題点について―
Subtitle : 原著
Authors : 岡良積, 宮本巍, 村田紘崇, 大橋博和, 青木啓一, 山下克彦, 北井公二, 村田透, 寺井浩, 宋秀男
Authors(kana) :
Organization : 兵庫医科大学胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 32
Number : 10
Page : 1818-1827
Year/Month : 1984 / 10
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 胸部下行大動脈瘤の手術に伴う重篤な合併症に脊髄虚血による脊髄障害(対麻痺)があるが, これまでその発生の予測は不可能とされてきた. 今回術中における脊髄虚血の発生の診断法として, ColesやCunninghamらによって報告された体性感覚誘発電位(somatosensory evoked potential, SEP)のモニタリングを5例に行いその有用性を検討した. SEPは総腓骨神経又は後脛骨神経を持続時間0.2msec, 強さ200Vで毎秒2回刺激し, 頭部より誘導して100回又は200回の加算平均を行って記録した. その結果, 4例では下行大動脈遮断中もSEPは何ら変化せず, 脊髄障害の発生もなく順調に経過した. しかし遮断中SEPが比較的長時間低下し, 一時消失した1例では, 遮断解除後SEPの回復が認められたにもかかわらず, 術後10時間後の測定では再び消失し対麻痺の発生がみられた. 本例では遮断中脳脊髄液圧の異常な上昇が認められた. そのため脊髄の循環障害を来し, SEPが低下・消失したものと思われた. また術後のSEPの再消失は, 術中の虚血の影響による脊髄の二次的浮腫によるものと考えられた. SEPは胸部下行大動脈瘤手術時の脊髄虚血発生の診断法としては有用な方法であるが, いまだ種々の問題点が存在する. 本論文では自験例の報告とともに, その問題点について考察を加えた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 胸部下行大動脈瘤, 下行大動脈遮断, 脊髄障害, 体性感覚誘発電位(SEP), 脳脊髄液圧
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