Abstract : |
38歳女性の下肢深部静脈血栓症に由来する慢性肺塞栓症の1例を経験し, 下大静脈結紮術に引き続き血栓剔除術を行い良好な結果を得たので文献的考察を加えて報告する. 症例は繰り返す下肢深部静脈血栓症の既往があり, 血液検査所見にて慢性DICの所見を認め, 右心カテーテル検査所見にて肺動脈圧68/22(39)mmHgの肺高血圧症を呈し, 心係数は2.53l/min/m2と低値を示した. 肺シンチグラム, 肺動脈造影にて慢性肺塞栓症と診断し, 気管支動脈造影所見では, 良く発達した気管支動脈の右下葉肺動脈への流入がみられ, 血栓剔除術の適応が示唆された. 術後の肺血管造影にて肺血管床の改善を認めるとともに, 心係数は4.44l/min/m2と増加し, 全肺血管抵抗値も術前の1/2に低下し, 術後2年10ヵ月を経過した現在, 何らの症状もなく元気に日常生活を送っている. 急性肺血栓塞栓症に対する肺動脈血栓剔除術はCooley1), Sharp(1961)2)により体外循環が導入されて以後も, その成績はなお格段の向上をみるには至っていないが, 一方, 本症に対する内科的血栓溶解療法の進歩と普及には目覚ましいものがあり, 最近における本症の手術適応は極めて限定されたものとなりつつある3)4). |