アブストラクト(32巻11号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 冷却高カリウム液による間歇的冠灌流法の心筋保護効果 ―心筋表面pHによる評価を中心に―
Subtitle : 原著
Authors : 石丸新, 平山哲三, 箱島明, 日野宏, 小西正樹, 山田充, 堀口泰良, 古川欽一, 高橋雅俊, 吉浜勲*
Authors(kana) :
Organization : 東京医科大学外科, *東京医科大学第1病理
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 32
Number : 11
Page : 1902-1909
Year/Month : 1984 / 11
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 高カリウム心筋保護液であるSt. Thomas病院液(S.T液)による間歇的冠灌流実験を行い, 種々の心筋温度条件を設定して, 阻血中の心筋代謝変化を心筋表面pHによって経時的に観察し, これと血流再開後の左室機能及び心筋の組織学的変化を検討することで, 心筋保護効果を総合的に評価した. 心筋表面pHは, 完全体外循環下での大動脈遮断前において7.43±0.11であり, 心筋温度25°~30℃の大動脈単純遮断群(I群)では急速に低下して60分後に5.68±0.21となった. 心筋温度25~30℃で, 室温S.T液を用いた冠灌流群(II群)では, 遮断後60分でpHは6.35±0.24となり, 心筋温度15~18℃の冷却S.T液冠灌流群(III群)では7.10±0.20, 心筋温度5~10℃の冷却S.T液冠灌流群(IV群)で7.30±0.17であった. II~IV群では, 2回目冠灌流直後にpHが平均0.25の一時的な回復をみた. 遮断解除後30分での完全体外循環下肺動脈送血による左室仕事量の測定では, I, II群で極めて不良であり, III群では左房圧の上昇によって回復傾向が得られた. IV群では遮断前値と同程度の良好な回復をみた. 摘出した心筋組織の電顕所見では, I, II群でミトコンドリアの障害が強く, III, IV群では保存状態は良好であった. 心筋表面pHの推移によって阻血中の心筋における代謝性変化を無侵襲的に把握することができ, これは左室機能の回復とよく相関した. 阻血中の心筋温度を10℃以下に冷却することで良好な保護効果が得られたが, なお徐々に進行する嫌気性代謝の存在が認められ, 本法によっても長時間の血流遮断や病的心筋に対する保護効果に限界のあることが推定される.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 心筋保護, 高カリウム保護液, 心筋表面pH, 左室機能
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