Authors : |
飯岡壮吾, 沢村献児*, 中村憲二*, 森隆*, 井内敬二*, 南城悟**, 前田元, 中元賢武**, 門田康正, 川島康生 |
Abstract : |
慢性膿胸に対する“近中心”は一定の評価を受けるようになったが, 本術式の手術適応についてその成績をもとに検討した. 過去10年間に取り扱った慢性膿胸138例中72例(無瘻性31例, 肺瘻11例, 気管支瘻25例, 胸壁瘻5例;胸腔内菌陰性33例, 陽性39例)に本術式を施行した. 一期的手術成功は67例(93%)で, 不成功5例の内訳は胸成術追加による治癒が2例, 開放療法ののち胸成術追加での治癒が2例, 開放療法中に脳血管障害での死亡が1例である. 不成功の原因は壁側胸膜縫合閉鎖部の多開(2例), 肺部分切除断端部肺瘻発生(1例), 炎症急性期に施行し肺及び壁側胸膜損傷の多発から起こった肺瘻発生(1例)と骨膜外剥離腔の感染(1例)であった. 従って, 本術式の施行においては壁側胸膜を温存し, 胸腔と骨膜外剥離腔とを完全に分離する遮蔽中隔として役立たせること, 術前に膿胸腔内の炎症を可及的に鎮静化することであり, 万一開胸後の手術操作で組織損傷が起こり易い炎症急性期には本術式施行を中止し, いったん閉胸して炎症が改善するまで延期することが手術成功率を高める. 術前に膿胸腔内及び全身の炎症症状の改善傾向がみられなければ本術式の適用は難しく, 開放療法ののち胸成術ないし筋肉弁充填術を考慮すべきである(対象138例中16例に開放療法を施行). 原発性膿胸の“近中法”施行治癒例において術後有意に%VC(p<0.05)及びFEV1/Pred VC(p<0.01)が改善したが, 胸成術追加治癒例では全例悪化傾向にあった. |