アブストラクト(32巻11号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : ファロー四徴症根治術後遠隔期における左室機能及びその予備力に関する研究 ―手術時年齢との関連についての検討―
Subtitle : 原著
Authors : 小林順二郎
Authors(kana) :
Organization : 大阪大学医学部第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 32
Number : 11
Page : 1943-1953
Year/Month : 1984 / 11
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : TF根治術後症例21例を対象とし, メトキサミンによる圧負荷をかけることにより左室機能及び, その予備力について検討した. 手術時年齢4歳未満の症例10例をI群, 4歳以上の症例11例をII群とし, 軽度肺動脈狭窄症例と機能性雑音を示した正常例の計6例を対照群とした. 1. 安静時の左室拡張末期容積(LVEDV)を正常左室に対する百分率で表すと, I群では136±11%, II群では128±23%であり, 対照群の103±12%に比べ各有意(p<0.005, p<0.01)に高値であった. 左室駆出率(LVEF)は, I群61±4%, II群60±5%であり, 対照群の平均68±4%に比べ, それぞれ有意(p<0.025, p<0.01)に低値であった. I群, II群の間にはLVEF, LVEDVに有意の差を認めなかった. 2. メトキサミン負荷により左室収縮期圧を約50mmHg上昇させると, LVEFはI群で57±6%, II群で49±10%, 対照群で63±5%へ各低下し, 対照群, II群では有意(p<0.02, p<0.01)の低下であった. また負荷時I, II群に有意差(p<0.025)を生じた. 心係数は負荷前後でI群3.9±0.5から3.8±0.5L/min/m2, 対照群4.0±0.8から4.1±0.6L/min/m2と有意に変化を認めなかったのに対し, II群では3.5±1.1から2.8±0.9L/min/m2へ有意(p<0.05)に低下し, 圧負荷に対してafterload mismatchがおこっているものと考えられた. 3. 安静時及びメトキサミン負荷時の左室圧容積曲線を描き, 両者の収縮末期の2点を結んだ直線の傾きを左室機能の指標Kpsとした. KpsはI群10.8±4.9, II群5.5±5.3, 対照群9.1±2.5mmHg/ml/m2でII群はI群に比して有意(p<0.05)に低値であった. 4. ファロー四徴症根治術後の左室機能及びその予備力は手術時年齢4歳未満の症例ではほぼ正常であり, 4歳以上の症例に比して良好であった. 従って根治術は少なくとも4歳未満で行うことが望ましいと考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : ファロー四徴症, 術後左室機能, 心予備力, メトキサミン圧負荷, afterload mismatch
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