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大動脈弁閉鎖不全症では左室への容量負荷により左室機能の低下が起こる. そこで, 術前後心臓カテーテル検査による血行動態的検索及び術後運動負荷試験による運動耐容能の面から, 大動脈弁置換術後の左室機能を検討した. 術前NYHA心機能分類でII度ないしIII度の大動脈弁閉鎖不全症7例, 大動脈弁狭窄症兼閉鎖不全症3例の計10例を対象とした. 全例男性で, 年齢は26～59歳(平均47歳)であった. 術後3～47ヵ月(平均24か月)に検査を施行した. 術後運動負荷試験では年齢29～42歳(平均37歳)の健常成人男子7例を対照群とした. 運動負荷試験は自転車エルゴメーターを用い, 25W, 50W, 75W, 100Wを各々4分間づつ負荷する連続多段階漸増法で, 心拍出量, 酸素消費量を測定した. 術前に認められた血行動態的異常は, 術後改善した. 術前増量していた左室拡張末期容積は177ml/m2から87ml/m2, 左室収縮末期容積は73ml/m2から25ml/m2, 左室心筋重量は260g/m2から150g/m2にそれぞれ減少した. また, 左室駆出分画は58.8%から70%, 左室円周平均短縮速度は0.99circ/secから1.56circ/secへそれぞれ上昇した. 術後運動負荷試験で, 運動時左室駆出分画は全例増加した. 10例中8例は100W負荷を達成し得て, 健常成人とほとんど差がなく, 運動耐容能は十分満足すべきものであり, 運動時の心ポンプ能は正常であった. 75W負荷で終了した2例は運動時に後負荷の異常増大が心ポンプ能を抑制したと考えられた. 以上から, 術前左室駆出分画50%以上, 左室円周平均短縮速度0.8circ/sec以上の大動脈弁閉鎖不全症では, 術後の安静時左室機能はほぼ正常に改善し, 術後の運動耐容能も十分あることが明らかになった. |
