Abstract : |
当科における心内膜炎手術例は33例で, 内11例(33.3%)を失った. この高い死亡率の原因を探るため, risk factor別に成績を検討した. 心内膜炎活動期手術群, 心不全に陥り緊急手術を要した群は各々12例あり, この2つのrisk factorが重複するものが8例あった. 活動期手術で6例(50%)を失ったのに比べ, 緊急手術群では8例(66.7%)を失った. 活動期手術例でも心不全を制禦し得た4例すべてを救命しており, 炎症の制禦より血行動態の破綻がより大きなrisk factorといえる. しかし活動期手術の33.3%に死亡原因の半数を占めたProsthetic Valve Endocarditis(PVE)の発生をみたのに対し, 非活動期ではそれが14.3%に止まったことも重要なrisk factorとして看過できない. 緊急手術群12例中大動脈弁(A弁)破壊が10例に, また死亡例11例中10例がA弁に関与しておりA弁での急速な弁破壊と心不全, またその結果に注目すべきである. 手術時期の決定は, 個々の症例あるいは罹患弁によっても病態の進行は異なり, 画一的に決めることはできない. 無侵襲な診断法を中心にした厳密な監視下に手術時期を失しないことが肝要である. 人工弁の選択については生体弁では病変が弁葉に及ぶこと, 機械弁で危惧される突然の機能不全にはbileafletで対拠し得ることを勘案し現在ではbileafletの機械弁が有利と考えている. 適切な手術時間の選択が心内膜炎手術の成績を向上させることは近年の我々の成績からみても明らかで留意すべきである. |