Abstract : |
最近, 我々はcardiac cachexiaを伴った69歳女性の大動脈弁置換術に成功した. この症例においては, 術前後に経静脈栄養(IVH)を施行し栄養管理上, 非常に有効であった. また術中よりの計画的大動脈内バルーンパンピングにより非常に安定した血行動態が得られ, 早期抜管を可能にした. それによる患者とのcommunicationの獲得は, 精神面でかなりの有効性があり, ICUの滞在期間を短縮できた. 高齢者弁置換術の中でもいわゆるcardiac cachexiaを伴っている場合は, 術前後の栄養管理の問題とともに, 開心術後の一般的管理の注意深い検討と, 特に腎不全, 肺合併症などの未然の防止が重要と思われる. また高齢者においては, 術後の精神障害も大きな問題と思われる. 最近の心筋保護法の発達, 術中術後の補助循環法の普及により, 重症心疾患患者の手術適応はますます拡大しているが, 今なおcardiac cachexiaを伴った症例への手術適応には異論が多い. 今回, 我々は慢性うっ血性心不全に伴う栄養失調状態に陥った69歳女性の大動脈弁置換術に成功した. この症例を通じて管理上幾つかの示唆を得たので報告する. |