Abstract : |
開心術後の出血傾向や多臓器障害の原因となる体外循環中の血小板消費や微小血栓形成の主原因の1つに体外循環回路や人工肺など人工物と血液の接触による血小板の活性化粘着凝集によるものが考えられる. 気泡型肺(BOS-10)による60分以上の成人体外循環症例47例について抗血小板薬術前投与群(dipyridamole 300mg/日, ticlopidine 300mg/日, ticlopidine 600mg/日)と非投与群における体外循環中の血小板機能を測定, 人工肺表面の血栓形成程度を走査電顕にて直視下に観察することにより, 体外循環中の抗血栓療法としての抗血小板薬術前投与の有効性を検討したところ次の結果を得た. 1. 体外循環中の血小板数, 血小板凝集能低下は抗血小板薬術前投与により抑制された. 2. 体外循環中の血小板凝集塊(25μm3~)の生成が非投与群で増加したのに対し, 投与群での増加はほとんど認められなかった. ticlopidine投与群ではdipyridamole投与群に比べより明白に血小板凝集能低下の抑制効果が認められた. 4. 人工肺内部での血栓形成は非投与群で著明に認められ, 投与群ではほとんど認められなかった. 5. 抗血小板薬術前投与による術中の循環系への影響や術後出血量の増大は認めなかった. 以上より抗血小板薬(dipyridamole, ticlopidine)の術前投与により血小板凝集能を適度に抑制しておくことは体外循環中の抗血栓療法として極めて有用であると結論される. |