Abstract : |
高度肺高血圧症, 心室中隔欠損症(VSD)(Kirklin II型)を合併したcommissural fusion typeの先天性僧帽弁狭窄症に対し, VSD閉鎖と交連切開術を行い良好な結果を得た. 症例は, 2歳9ヵ月女児. 乳児期早期から心不全, 呼吸不全を繰り返し, 軽度チアノーゼを認めた. 術前のPp/Ps=1.07, 肺動脈楔入圧平均値(Ppcw)=31mmHg, 肺血管抵抗値(PVR)=6.3units・m2であった. 術後Pp/Ps=0.54, PVR=5.1units・m2, Ppcw=17mmHgと低下し, Mモード心エコー図で, 左房径の減少, 僧帽弁拡張期前尖後退速度, 前尖の最大振幅の改善, 断層心エコー図で弁口径の拡大がみられ経過良好である. 本症の病変を決定する上で断層心エコー図は有用であった. 本例に対する経験と診断, 治療上の問題点につき文献的考察を加えた. なお, VSDを合併した本症の手術成功例は, 自験例を加え, 本邦では3例のみであった. 先天性僧帽弁狭窄症(congenital mitral stenosis)は, まれな先天性心疾患である. 新生児期・乳児期早期から心不全を起こし, 3歳までそのほとんどが死亡し, 手術成績も不良で, 本邦での手術成功例は少ない. |