アブストラクト(33巻1号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 人工弁置換術後早期の血栓形成要因とその抑制 ―抗血小板薬併用療法について―
Subtitle : 原著
Authors : 高山鉄郎
Authors(kana) :
Organization : 東京大学医学部胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 33
Number : 1
Page : 14-24
Year/Month : 1985 / 1
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 最近人工弁置換術の技術の向上, 手術操作の改良に伴い術後の血液凝固能の回復も早くなった. その血液凝固能の早期回復は過視できず, また術後の血栓塞栓症発生には血小板の役割が極めて重要であることが明らかとなってきた. そこで人工弁置換術を行った49例について術後第3病日よりワーファリンのみ投与群, ワーファリンと抗血小板薬(dipyridamole 300mg/日, ticlopidine 300mg/日, ticlopidine 600mg/日)併用投与群における術後早期の血小板機能, 血液凝固能を測定, 抗血栓療法の開始時期, 方法について再検討を加えたところ次の結果を得た. 1. 血小板数は第3病日より著しく増加, 抗血小板薬投与は血小板数の変化に影響を与えなかった. 2. 血小板凝集能は第3病日以後著しく亢進したが抗血小板薬投与により抑制された. 3. 血小板凝集塊(25μm3以上)は術後ワーファリン単独群では増加, 抗血小板薬併用群では減少した. 4. ticlopidineはdipyridamoleより強い血小板凝集抑制作用が認められた. 5. dipyridamole 300mg/日は頭痛嘔気などにより投与中止となることがあった. 6. 血液凝固能(P.T., APTT, Fib.)の術直後の低下は軽度で第3病日には既に十分回復した. 7. 抗血小板薬投与はワーファリン必要量に影響しなかった. 8. 術後第3病日で既に十分血小板凝集能, 血液凝固能とも回復しており, 抗血栓療法はより早期に開始すべきと考えられた. 以上より人工弁置換術に対する抗血栓療法として術直後よりdipyridamole 2mg/kg/日の持続点滴, 第3病日以後ワーファリンとticlopidine併用投与を行っている. 現在まで35例の本法施行中に血栓塞栓症は1例の経験もない. 本法は抗血栓療法として極めて優れた方法であると結論される.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 人工弁置換術, 抗血栓療法, 抗血小板薬, 血液凝固, 血小板
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