アブストラクト(33巻1号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 胸腹部大動脈瘤に対する外科治療
Subtitle : 原著
Authors : 数井暉久, 小松作蔵, 佐々木孝, 上田睦, 渡辺祝安, 前川功二, 田中利明
Authors(kana) :
Organization : 札幌医科大学胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 33
Number : 1
Page : 32-38
Year/Month : 1985 / 1
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 胸腹部大動脈瘤9例の手術手技, 腹部諸臓器及び脊髄の栄養血管の再建及び補助手段などについて検討し, 報告する. 対象の性別は男8例, 女1例であり, 年齢は38~66歳平均44.3歳であった. 全例, 紡錘状動脈瘤の形態を呈し, Crawford病型分類ではI型2例, II型4例, III型2例, IV型1例であった. 成因は動脈硬化性8例及び大動脈炎症候群1例であった. 到達経路は開腹1例, 開胸, 開腹2例及びspiral opening 6例であり, 術式としてII型1例の瘤空置, 非解剖学的バイパス術, III型1例のDeBakey術式を除くと, 他の7例にはCrawfordのgraft inclusion techniqueを用いた. なお, II型2例には最初に胸部大動脈再建を行い, 次いで二期的に腹部あるいは胸腹部大動脈再建を施行した. 腹部諸臓器の栄養血管のうち腹腔動脈6例, 上腸間膜動脈4例, 左右腎動脈3例, 下腸間膜動脈1例に再建を行った. またT9よりL2までの脊髄栄養血管の再建は6例に施行し, 最近の症例ではsomatosensory evoked potentials(SEP)を参考とした. 胸部大動脈再建時の補助手段としては部分体外循環法を6例に計7回用いた. 手術成績は7例を救命したが, 他の2例を出血及び脳血管障害で失った. 最長5年の遠隔追跡では非解剖学的バイパス術1例が肺内破裂の再手術時に死亡した以外はすべて健在である. 胸腹部大動脈瘤の到達経路としてはspiral opening法にて良好な視野が得られたが, II型の広範囲型では胸部及び腹部大動脈の二期的血行再建が有用であった. graft inclusion techniqueは手術時間の短縮, 出血のコントロール, 術後腹部主要分枝閉塞の減少などの利点を有し, 補助手段としては拍動流部分体外循環法は有用であった. なお, 広範囲型における脊髄障害の予防としてT9-L2の再建は重要であり, この際SEPモニターが有用であった.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 胸腹部大動脈瘤, spiral opening, graft inclusion technique, 腹部臓器分枝再建, 対麻痺
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