アブストラクト(33巻1号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : ファロー四徴症における姑息的右室流出路拡大術の外科的検討
Subtitle : 原著
Authors : 赤坂忠義, 伊藤健二, 大川恭矩, 高山鉄郎, 長田信洋
Authors(kana) :
Organization : 神奈川県立こども医療センター胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 33
Number : 1
Page : 50-57
Year/Month : 1985 / 1
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : ファロー四徴症の姑息手術に際し, 通常の短絡手術によっては, 将来の根治手術に必要な末梢肺動脈の発育は期待しにくい, と考えられた症例に, 姑息的右室流出路拡大(再建)術を施行した. これまで10例に施行し, 病院死3例, 遠隔死1例, 生存6例で, 生存6例中3例は根治手術が終了, 3例は待期中である. また, この間の根治手術は約250例であった. 術後はPaO2 63.7±17.4mmHg, PaCO2 49.2±9.0mmHgと増加し, チアノーゼの改善とともに, 換気不全の状態を示し, Ht, RBC, Hbなどは, 正常範囲内へと改善した. 右室流出路の拡大は, 根治手術時の拡大基準, すなわちRowlattらにより, 年齢, 体重, 身長から求めた回帰式による正常予測値に基づいているが, これとほぼ同等に行った. 術後の臨床症状は, 肺出血を中心とする重篤な呼吸不全, 遷延するうっ血性心不全を示したものがあり, これは, CTRの増加(術後1年6ヵ月で約65%), 肺動脈の発育度を示す肺動脈指数の急激な増加(術前平均1.20から術後1年で平均2.10)などとも一致する所見であった. 提示した症例は, 数回の手術のあと, 根治手術が終了し, 心内の血流は正常化されたが常在性チアノーゼを示し, これは肺血管床由来性のものと懸念されている. 本術式に際しては, 右室流出路の拡大は, 軽度狭窄を残存させ, 右室肺動脈圧較差30~50mmHg, 左右短絡率30%以下になるよう小さめにとどめておくことが, 肺高血圧症の招来に基づく種々の合併症を避ける一方策であり, その結果として十分な待期期間をおいてから根治手術を施行し得るものと考える.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 姑息的右室流出路拡大術, 肺出血, 呼吸不全, うっ血性心不全, 右室流出路拡大基準
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