Authors : |
石丸新, 村越貞昭, 山口寛, 北村昌之, 山田充, 小池荘介, 堀口泰良, 古川欽一, 高橋雅俊 |
Abstract : |
Convexo-concave型Bjork-Shiley人工弁(外径31mm)を用いて僧帽弁置換術を施行した19症例について, 術後1ヵ月以内及び6ヵ月目の2回にわたり, X線透視下に人工弁を側面より35mmシネ撮影記録(cineradiography)し, 心拍動に伴う弁座動揺と, これに関与する心拡大の意義について検討した. 弁座は僧帽弁前尖側の縫着部を支点として左室拡張期に左室側へ, 収縮期に左房側へと振子運動し, その最大動揺角度は術後1ヵ月以内で8.8±4.7°(mean±SD)であり, 6ヵ月目においても変動せず, 10°以上の動揺が32%の症例にみられた. 経過中に弁機能異常をみたものはなく, 20°以内の弁座動揺所見をもって弁縫合不全の診断根拠とすることは不適当と考えられた. 術前みられた左房拡大は術後に回復する傾向があった(p<0.05). 術前のLVD, LAD, LVDdと術後1ヵ月以内で測定した弁座動揺角度との間には各々γ=0.623, 0.642, 0.544の正相関が得られ, 特にLAV 450ml以上, LAD50mm以上の症例で高率に10°以上の動揺がみられた. しかし, 術後における各測定値の間には相関がなく, 弁座動揺に関与する主な因子は術前での左房拡大であることが示唆された. 僧帽弁位に置換された人工弁は左室拡張期に流出方向へ傾斜し, その角度は左房を中心とした心拡大によって最大20°にも達することが判明し, 特に傾斜型disc弁では血行力学的に不利な要素となることが考えられ, 弁置換術に当たってはLAV, LAD, LVDdを指標として, 後尖側弁輪部の固定や左房縫縮を考慮し, 人工弁の過度の偏位を防止することが望ましい. |