Authors : |
前田世礼, 広瀬一, 松田暉, 中埜粛, 白倉良太, 榊原哲夫, 金香充範, 笹子佳門, 野村文一, 川島康生 |
Abstract : |
左室肥大を示した大動脈弁置換術症例12例に対し, 心局所冷却併用cardioplegia(CP)による心筋保護を行い, CP液投与量を中心に, 心筋保護を左右する因子と術後のcreatine phosphokinase(CPK)及びCPK-MBの最高値(peak)との関連について検討した. 対象の手術時年齢は41.7±8.7, 体重51.9±6.4kg, 体表面積1.53±0.14m2, 左室心筋重量(LV mass)286±117grであった. 大動脈遮断時間は103±52分, 最低心室中隔温は6.6±3.0℃であった. 初回のCP液は, 心室中隔温が15℃以下になるまで投与し, 投与量は680±269mlとなった. 再投与は, 30分ごとに初回の半量で行った. 術後のpeak CPKは304±163mIU/ml, peak CPK-MBは25±16mIU/mlであった. LV massと術後のpeak CPK-MBとの間には相関係数r=0.6059, p<0.05の統計学上有意な正の直線相関があり, 程度は軽いものの, 心筋損傷の程度は, 心肥大の強い程大きいことが認められた. しかし, 大動脈遮断時間, 最低心室中隔温とpeak CPK, peak CPK-MBとの間に有意な相関を認めなかった. LV mass 1gr当たりの初回CP液投与量(initial cardioplegic dosage(ICPD)index)と術後のpeak CPK-MBとの間には, 相関係数r=-0.7417, p<0.01の有意の負の相関を認めた. 従って左室肥大心においては, 低温に加えてLV massを考慮したCP液投与が必要であり, ICPD indexとして約3.0ml/gr必要であると考えられた. |