Abstract : |
二重指示薬希釈法の原理により肺血管外水分量(E.V.L.W.)を肺手術後症例について, 術前, 術直後より術後3日目まで経時的に測定し, また同時にSwan-Ganzカテーテルを用いて血行力学的パラメーターも検討しE.V.L.W.の臨床的意義について検討した. 症例は肺切除量の程度によりI群:肺部分切除以下の肺切除例9例, II群:肺癌に対する肺葉切除, リンパ節郭清例11例, III群:右荒蕪肺に対する右肺全剔除1例の3群に分けた. 以下の結論を得た. 1)肺のE.V.L.W.は術後6~12時間までは上昇傾向を示し, 特に肺癌に対する肺葉切除例において著明であった. しかし術後2~3日では低下し肺葉切除例は術前値より低値を示した. 2)術後早期のE.V.L.W.の上昇は開胸, 手術操作に伴う肺血管透過性の亢進によることが考えられ, その後のE.V.L.Wの低下の原因としては肺容積の減少によることが考えられた. 3)血行力学的パラメーターとの相関ではE.V.L.W.はExtravascular Thermal Volumeとも考えられることより術後6~12時間の急性期では肺動脈圧, 肺小動脈血管抵抗によく相関しE.V.L.W.をみる上では肺動脈圧モニターが適切な指標と思われた. しかし術後1日目ではほぼ術前値に復した. またその変化は肺葉切除例で明らかであった. 全身小動脈血管抵抗, 左右心室分時仕事量指数には著変を認めなかった. 4)COP-PAWPは術前, 後でほとんど変化を示さなかった. 5)検討症例の術後経過は全例良好でありE.V.L.Wよりみて, 術前値と比して術直後には軽度上昇を示すものの, 早期に低値を示す例は術後経過は良好で術後管理も容易であると思われた. |