Authors : |
中埜粛, 広瀬一, 松田暉, 白倉良太, 佐藤重夫, 榊原哲夫, 酒井敬, 谷口和博, 川島康生, 森本静夫* |
Abstract : |
1972年1月より1982年12月まで直視下交連切開術(OMC)を施行した295例(Sellors分類I型-37例, II型-179例及びIII型-79例)の術後遠隔成績について僧帽弁性状別に検討した. なおこの間, 僧帽弁狭窄症(MS)における弁置換率は6.3%であった. (1)全症例については手術死亡7例(2.4%), 遠隔死亡9例(3.1%)-心臓外死亡を除くと4例(1.4%)-及び再手術9例(3.1%)-術後平均5.7年-であった. 僧帽弁性状別のmortality及び再手術のevent-free survival rate(術後11年)はSellors I型100%, II型84%及びIII型78%であった. (2)術後臨床症状の改善度はNYHA I度となったものがSellors I型では95%, II型では80%, III型では68%であった. (3)再手術例の9例中6例は術前より合併していた僧帽弁逆流の増悪によるもので, 狭窄の遺残ないし再狭窄によるものは3例であった. (4)超音波検査により経時的に僧帽弁弁口面積を測定した結果, Sellors III型では術後5年未満例で平均2.4cm2であったが, 術後5年以上経過例で平均1.7cm2まで有意の狭小化を認めた. Sellors I型及びII型ではその変動は有意でなかった. 以上より, OMCの術後遠隔成績は僧帽弁性状により左右されるが, 高度の弁下病変を呈するものでも逆流の発生なく至適サイズの弁口が得られればOMCの効果は十分に期待し得るものである. OMCの適応外とされるのは, 高度の弁下病変でなくむしろ弁尖の高度の肥厚及び石灰化による弁可動性の完全消失例, あるいは有意の弁逆流合併例であると考える. 更に長期の術後経過観察を要するが, 今後ともMSに対しOMCを第一選択としていく方針である. |