Abstract : |
過去21年間に, 拡大合併切除が行われた隣接臓器直接浸潤肺癌症例55例を対象に, それらの術後成績と問題点につき検討を加えた. それら55例の累積3年生存率(以下3生率と略す)は23%, 50%生存期間(以下MSTと略す)は16ヵ月で, 同時期のT3ゆえ試験開胸に終わった30例の3生率3%, MST10ヵ月に比べ良好で, 両群の間で生存率曲線に有意の差を認めた. 拡大合併切除例のうち, 準治癒手術群29例の3生率は34%, MSTは19ヵ月で, 一方, 絶対的非治癒手術群26例のそれらは6%と10ヵ月で, 準治癒手術群の生存率が有意に良好であったのに反し, 絶対的非治癒手術群と試験開胸群との間にはほとんど差はみられなかった. p-N因子別にみた場合, N0群29例の予後はやや良好であったが, N2群20例との間に生存率曲線に有意差はみられなかった. 組織型別にみると, 扁平上皮癌の3生率とMSTは47%と32ヵ月で, 他の組織型に比べ, 生存率曲線は有意に良好であった. 切除臓器別にみた場合, 胸膜, 肋骨, 心膜, 心・大血管, 横隔膜の順に予後良好で, 胸膜浸潤の4例, 肋骨浸潤の2例及び心膜浸潤の1例が3年以上生存した. しかし, 肋骨や肋間筋に浸潤が及び, しかもsurgical marginに癌が遺残した場合には, その予後は極めて不良で, 症状の寛解もほとんどみられなかった. 一方, 心・大血管合併切除群の長期予後も不良であったが, reductionによる多少の延命と, それらの臓器に対する物理的影響の除去を目的としたemergency surgeryに意義の認められた症例も存在した. |