Abstract : |
昭和48年6月以降昭和57年5月までの9年間に90分以上の大動脈遮断を行った成人例開心術32例を対象として, 大動脈遮断中の心筋保護法により3群に分けた. 第1群(10例)は冠灌流圧100mmHg以下, 灌流量60ml/min前後の低圧, 低流量の冷却血液による持続冠灌流法を用いた群であり, 第2群(12例)は高カリウム, 高滲透圧性のCardioplegia液の間欠注入群である. 第3群(10例)は両者を併用する群でCardiplegia液を注入した後, 同じ経路を介して冷却血液持続冠灌流を行った. 各群の間には性別, 年齢, NYHA重症度, 大動脈遮断時間などには差は認められなかったが, 死亡率では第1, 第2群はそれぞれ30%, 25%であったが, 第3群には死亡例は認めなかった. 死亡例のうち, 特に心筋保護法に関係が深いと思われる低拍出量症候群で死亡した例は第1群1例, 第2群3例と第2群に多かった. 術後のCPK-MBの測定ではΣCPK-MB, max CPK-MBともに第1, 第3群間に有意差は認められなかった. Cardiplegia冠灌流併用法は十分に弛緩した状態の心筋に対する冷却血液灌流が最も保護効果があるとの考えから創案した方法であるが, 特に重症心疾患に対して有効な心筋保護法であることを確認した. |