Abstract : |
重症冠動脈狭窄の多枝病変例において, 多枝バイパスを施行する場合, いかに心筋保護を行うかが, 手術成績に影響を与える主要因の1つである. 我々はかかる症例に対し, blood cardioplegiaを用いた種々の心筋保護法の工夫を行い, 血清酵素学的方法, 特にCK-MBの経時的測定の面から, 我々の施行する心筋保護法が多枝バイパスにおいて有効かどうか検討を加えた. 対象症例は, CK-MBの経時的測定のできた急性期生存例30例であり, bypassを行った末梢冠動脈数は平均3.67本, 大動脈遮断時間は158.8分であった. CK-MBの測定は, 大動脈遮断解除後3, 6, 12, 24時間目に行ったが, その平均値は3時間値68.3IU/L, 6時間値51.8IU/L, 12時間値36.7IU/L, 24時間値20.0IU/L(免疫阻害法, 25℃)と3時間値にpeakがあった. peak CK-MBが120IU/Lを越える重症心筋傷害合併例はみられなかったが, 100IU/Lを越える例が2例にあり, また24時間値が80IU/Lを越える例が1例にあった. いずれの例も心電図及び心機能の面から総合的に判定し, perioperative myocardial infarctionを確診できる所見はみられなかった. また左室駆出率40%以下の5例についても, 術後の心機能は比較的良好に維持されており, blood cardioplegiaを用いた種々の工夫が, 長時間大動脈遮断の多枝バイパスの心筋保護に有効と思われた. |