アブストラクト(33巻4号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 先天性右心負荷疾患の術後の左心機能の推移 ―心エコー図による観察―
Subtitle : 原著
Authors : 山崎芳彦, 松川哲之助, 宮村治男, 金沢宏, 矢沢正知, 今泉恵次, 江口昭治
Authors(kana) :
Organization : 新潟大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 33
Number : 4
Page : 441-447
Year/Month : 1985 / 4
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 右心系に負荷が加わった場合, 左心系の心機能も障害されると報告されているが4)5), 各種右心負荷疾患において, 術前の左心機能低下の程度, 術後の回復の時期とその度合いを検討するため, 手術前後に心エコー検査を行った. 対象はすべて10歳以下の症例とし, 肺高血圧症を伴った症例をI群として, この中に先天性僧帽弁狭窄症2例, 三心房心1例, 総肺静脈還流異常症2例及び心房中隔欠損症1例の計6例が含まれた. 一期的根治手術を行ったファロー四徴症21例をII群, 肺高血圧症のない二次口欠損型心房中隔欠損症10例をIII群とした. I群は比較的まれな疾患が多いため, 各疾患の術後心機能の推移の特長を論ずるには困難が多い. しかし, 心エコー図による観察では, 左室径の拡大, 右室径の縮小などの変化は, 術後約1週までに成される例が多く, 術直後から上昇を示した左房圧も約1週間で低下したことからみると, この間の血行動態の変化が最も大きいと考えられた. I, II, III群間の比較では, 左室の拡大はII, III群ともI群と同様に拡大例では比較的早期にその変化がみられたが, I群に比して程度は少なく, 手術前後の有意差もなかった. 右室左室径比はI, III群は術後低下したが, II群は低下しなかった. これは, ファロー四徴症における右室流出路再建術後の肺動脈弁閉鎖不全や, 肺動脈狭窄の残存による右室負荷のためと考えられる. 心エコー図による術後早期のポンプ機能としての評価は, 術後の心室中隔の奇異性運動のため不可能な場合が多い. しかし, 左室の後壁運動だけみると増加例が多く, 心筋自体の収縮力の低下はないと考えられた. 従って, 右心不全が高度の疾患でも, 左室収縮機能の低下は少なく, 可逆性であり, 術後早期の血行動態の変動期を乗り越えれば, 良好な心機能の回復が得られると考えられる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 先天性右心負荷疾患, 右室左室の相互関係, 先天性心疾患の心機能
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