Abstract : |
僧帽弁狭窄症で交連切開術の既往を有する72歳の女性が失神発作を主訴に来院した. 心エコー図で, 左房内に遊離球状血栓(ball thrombus)があり, それが時に僧帽弁口に嵌入する所見を得たので, 緊急摘出手術を行った. 術中に, 嵌頓のために循環停止を数回起こしたが, 体を揺することなどにより危機を脱し, 直径3cm, 14gのball thrombusを摘出することができた. 左房内ball thrombusはまれであるが, 極めて高頻度に, しかも早期に突然死や多発塞栓を起こすために, 摘出に成功した例は少ない. それゆえ, 診断がつき次第, 可急的に摘出を行うことが大切である. 僧帽弁狭窄症に左房内血栓が合併することはまれではないが, その中で遊離球状血栓(ball thrombus)は極めてまれである. しかも, 遊離球状血栓は高頻度に突然死や全身への塞栓を発生し, またそれが早期に起こるために生前に診断された例は少なく, 更に, 手術的に摘出に成功した報告例は極めて少ない. 今回, 我々は失神発作を主訴とする女性を本症と診断し, 緊急手術により摘出に成功したので, 若干の考察を加えて報告する. |