Authors : |
神吉豊, 中村昭光*, 和田行雄, 門脇政治, 北浦一弘, 白方秀二, 大賀興一, 中路進*, 岡隆宏, 橋本勇* |
Abstract : |
心肺移植は, Shumwayを中心とするStanford groupにより精力的に進められ, 1981年3月に臨床第1例目をみるに至り, 現在では世界で40例近い臨床例が報告されている. 我々も1982年10月より雑種成犬36頭及び, 日本猿21頭を用い, 計20回の心肺移植を行い, 手術手技上の問題点につき検討した. 1. cardioplegiaを用いた群の方が, 4℃生食単純浸漬法を用いた群よりも, 満足すべき血圧を得られる頻度が高く, 臨床応用を考えてみても心肺保護法の確立が望まれる. 2. donor, recipientともpericardiectomy後に心肺の剥離を行うと心臓が生理的位置より極端にずれ, 循環動態の悪化につながるため, pericardiectomy前に十分に剥離を行う方が望ましい. 3. 剥離面, 特に後縦隔からの出血がcritical pointの1つと考えられ, この部の出血を最小限に留める工夫が必要と考えられる. 4. 移植に際し, 吻合順序は, 気管, 大動脈, 右房とするよりも, 気管, 右房, 大動脈の順の方が手技上も容易で出血も少ない. 5. graftの肺をinflateする場合, overinflationを避け, 10cmH2O内外の圧でinflateした群の方が肺水腫の発生頻度が低い. 6. donor, recipient間に気管口径差があることが多く, 長期予後を左右するair leakageを来すことがあり, 気管吻合に際しては膜様部より開始し, この部分で吻合のdiscrepancyを可能な限り少なくすることがair leakage防止に有効と考えられる. 7. 雑種成犬群, 日本猿群とも, 全例体外循環離脱不能であったが, 上記のような手術手技上の工夫を施こすことによって, 満足すべき血圧の得られる症例が増加した. |