アブストラクト(33巻6号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 開心術後の乏尿性急性腎不全
Subtitle : 原著
Authors : 高木勇, 田中一彦, 公文啓二, 青野信卓, 富野哲夫*, 内藤泰顕*, 藤田毅*
Authors(kana) :
Organization : 国立循環器病センターICU, *国立循環器病センター心臓血管外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 33
Number : 6
Page : 884-888
Year/Month : 1985 / 6
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 開心術後の急性腎不全は, 重篤な開心術後合併症の1つであり, 特に乏尿性急性腎不全は予後不良である. 今回我々は開心術後に急性腎不全(ARF:血清クレアチニン≧2mg/dl)に陥った症例を, 乏尿(尿量<500ml/day/1.48m2)の有無により, 乏尿性急性腎不全(O-ARF)と非乏尿性急性腎不全(N-ARF)とに分類し, 両者を比較検討した. 1982年の1年間に当センターICUに入室した開心術後症例は446例で, このうちARFと診断されたのは34例(7.6%)であった. この内訳は, O-ARFが5例(1.1%), N-ARFが29例(6.5%)で, 死亡はそれぞれ1例(20%)と3例(10.3%)であった. 体外循環時間はO-ARFの方がN-ARFに比べて長時間であった(p<0.05). 腎機能について, 術前と体外循環中はO-ARFとN-ARFとの差異は認められなかったが, 術後はO-ARFでより急峻な血清クレアチニン(Scr)の上昇を認め, クレアチニン・クリアランス(Ccr)が術当日より有意に低下していた(p<0.05). 尿量と自由水クリアランス(CH2O)については, 両者に差は見られなかった. ARF 34例中, 術当日のCcrが30ml/min/1.48m2以下の症例は12例で, このうちO-ARFは4例で, いずれも術後, 低心拍出量症候群(LOS)や不整脈など血行動態の不安定に伴って, Ccrの急激な低下を認め乏尿に陥っていた. N-ARFは8例で, 術後血行動態の安定が得られ, Ccrの低下を認めなかった. 従って, 術当日のCcrが30ml/min/1.48m2以下の重症腎機能障害を呈する症例に対しては, 血行動態の悪化により容易にO-ARFに陥るため, 特に血行動態の安定を維持することが肝要であると思われた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 開心術後急性腎不全, 乏尿性急性腎不全, 非乏尿性急性腎不全
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