Authors : |
有川和宏, 森下靖雄, 豊平均, 山下正文, 湯田敏行, 宮崎俊明, 下川新二, 丸古臣苗, 平明 |
Abstract : |
左室肥大著明な大動脈弁閉鎖不全症(AR)は手術予後が術前のデータから予測できないことが多い. そこでcold blood potassium cardioplegia(cold BPC)導入以来のAR手術成績を検討し, 併せて手術予後に関連する因子を検索した. 後天性AR手術症例33例中3例(9%)を失った. 3例中2例が突然の不整脈によるもので他の1例は脳塞栓によるものであった. また術後IABPを要したものが4例でうち3例を救命し得た. 33例を術後経過良好群(I群:27例)と経過不良群(II群:手術死及びIABP施行の6例)に分け, 手術成績に影響を及ぼすと考えられる術前・術中の諸因子を検討した. 自覚症の程度, 年齢, NYHA機能分類, CTR, 心電図上の肥大所見, 心エコー上のLV enddiastolic dimension(LVDd), LV end-systolic dimension(LVDs)などで両群間に有意の差はみられなかった. しかしLVDd, LVDsから算出されるLV ejection fraction(EF)及びLV fractional shortening(FS)では差が表れ, 特にFSでより大きな有意差を示した. そこでLVDd-FS間, LVDs-FS間の関係をplotしてみたところLVDs-FS間に有意の相関がありしかもLVDs 50mm以上, FS25%以下の領域に心機能に原因を求められる全手術死亡例とIABP施行例が含まれ, 手術予後を予測する上で有用な指標と考えられた. 術中因子としての体外循環時間, 大動脈遮断時間でI, II群間に有意差がみられなかったこと, またAR例での手術死亡率9%は同時期での全後天性弁膜疾患での手術死亡率10%(228例中22)と大差ないことなどから左室肥大著明なAR例でもcold BPCの卓越した心筋保護効果がうかがえた. |