Abstract : |
心筋保護法の進歩により, 長時間の開心術が可能となってきたが, 心筋保護効果を動的に捉えることは難しい. 今回我々は, 実験においては組織pH, PCO2, 臨床では組織PCO2を種々な条件下で連続的に測定し比較検討することにより, 至適心筋温, 心筋保護効果の評価及び再灌流後の代謝動態について研究した. 実験は雑種成犬30頭を用い, 大動脈遮断時の平均心筋温と心筋保護液(以下GK液)の使用により6群に分けた. 大動脈遮断時間はI群30分, II~IV群60分とした. I群:平均心筋温33℃, GK液非使用, IIn群:18℃, GK液非使用, IIs群:18℃, 15℃GK液1回投与, IIIs群:12℃, 4℃GK液1回投与, IIIm群:11℃, 4℃GK液15分ごとに投与, IV群:9℃, 4℃GK液15分ごとに投与, 以上である. また, 臨床においては, GK液を大動脈基部よりの穿刺にて注入した6例をA群, 大動脈切開後, 直接冠動脈より注入した9例をB群とした. 実験ではIV群では著明に抑制され, IIIm, IV群では再灌流後の回復は良好であった. また, 再灌流後の心機能及びCPK-MB値もIV群で良好な結果を得た. 臨床では平均心筋温はB群10.2℃でA群18.0℃に比べ有意に低く, 遮断解除前PCO2もB群で有意に低かった. また, 解除前PCO2と大動脈遮断時間との積は, 遮断解除後のCPK-MB値と強い相関を示した. 以上の結果より, 至適心筋温は8~10℃と考えられ, K+を加えたmultidose cardioplegia法の有効性及び心筋保護効果の指標としての組織pH, PCO2測定の有用性が示唆された. |