アブストラクト(33巻7号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 大動脈弁置換術の術後遠隔成績の検討 ―特に術前左室機能と術後遠隔予後について―
Subtitle : 原著
Authors : 谷口和博, 広瀬一, 中埜粛, 松田暉, 榊原哲夫, 佐藤重夫, 酒井敬, 榊成彦, 河内寛治*, 川島康生
Authors(kana) :
Organization : 大阪大学医学部第1外科, *奈良県立医科大学第3外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 33
Number : 7
Page : 1069-1077
Year/Month : 1985 / 7
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 1970年8月より1981年12月末までの間に施行したBjork-Shiley弁による大動脈弁置換術(AVR)症例113例(男83例, 女30例, 手術時年齢4~72歳, 平均38歳, 術後追跡期間平均3年5ヵ月)の遠隔成績を, 特に術前左室機能と遠隔予後との関連性につき検討した. 1. 手術死亡は9例(8.0%)であった. 心筋保護液導入後の手術死亡は1例(1.4%)のみであった. 2. 遠隔死亡は耐術例104例中11例(10.6%)であり, 術後11年のactuarial survival rateは80.9±6.3%であった. 死因は心不全3例, 突然死3例, その他感染性心内膜炎2例, perivalvular leakage1例, 頭蓋内出血1例及び自殺1例であった. 3. 心不全死あるいは突然死した6例(AR5例, AS1例)の術前左室機能を生存例のそれと比較した. ARでは遠隔死亡例の術前左室駆出率(EF)は0.27±0.04, 左室収縮末期容積指数(LVESVI)は286±48ml/m2であり, 生存例(n=41)の術前EFは0.47±0.11, LVESVIは114±56ml/m2であった. 遠隔死亡例と生存例の間にはそれぞれ有意差を認めた(p<0.001, p<0.001). ASでは遠隔死亡例の術前EFは0.22, LVESVIは219ml/m2であるのに比し, 生存例(n=12)の術前EFは0.46±0.17, LVESVIは80±64ml/m2であった. 4. これら遠隔期の心不全死, あるいは突然死症例はすべて術前EF0.35以下, LVESVI200ml/m2以上を示し, 同様の術前左室機能を呈した9例中の6例(67%)に相当した. 5. 従って術後遠隔期の心原性死亡を避け得るための術前左室収縮能の限界は, EF0.35, LVESVI200ml/m2であり, 少なくともこれに至るまでに手術を行うべきであると結論される.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 大動脈弁置換術, 遠隔成績, 遠隔死亡, 術前左室機能
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