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大動脈弁置換(AVRと略)症例及び大動脈弁及び僧帽弁置換(AVR+MVRと略)症例における術後低心拍出症候群(LOSと略)の病因解明及びその早期予測の可能性探究を目的に術後心機能と術前術中の諸危険因子との因果関係を重回帰分析により調べた. 対象はAVR42例, AVR+MVR27例の計69例で, 検討を行った危険因子は病歴因子7項目, 血行動態因子10項目, 術中因子4項目の計21項目であった. 術後心機能は循環維持に要した治療内容により以下のごとく4群に分け各々1～4の点数を与えてLOSスコアとした. (1)LOS非合併例. (2)LOS合併例. 常用量のカテコールアミンの投与が必要. (3)LOS合併例. 機械的心補助(IABPなど), 又は常用量以上のカテコールアミン投与が必要. (4)LOSによる死亡症例. LOSとの相関を有すると思われた因子は, AVR群では, 左室心筋容積係数(LVMMI), 体外循環時間(ECCT), 心不全発作の病歴, 運動能(NYHA)などであり, 術後LOS指数に対する重回帰式はY=-0.71±0.03(LVMMI)+0.004(ECCT)+0.22(NYHA)重相関係数は0.78で, 上記3因子の変動により, LOSスコアの61%の変動が説明可能であった. AVR+MVR群では運動負荷試験によるΔLVWI/ΔLVEDP, LVMMI, NYHA, 左室拡張期偏心率, ECCTなどがLOSと相関を有すると思われ, 術後LOSに対する重回帰式はY=-0.50+0.60(ΔLVWI/ΔLVEDP)+0.003 (LVMMI)+1.18 (NYHA)+0.003 (ECCT)+0.38 (ΔLVSWI/ΔLVEDP)重相関係数は0.87で, 上記5因子の変動により, LOSスコアの76%の変動が説明可能であった. AVR群及びAVR+MVR群ともに特徴的なLOSに対する危険因子はLVMMIに代表される心筋容積因子であることが判明, 特に肥大心に対しては十分な心筋保護に留意すべきであることが示唆された. |
