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心臓手術後の剖検例143例の肺について, 心疾患の種類, 術後生存期間, 呼吸不全の状態などの臨床経過と対比した病理組織学的検討を加えた. 各症例の主要組織所見は, 心疾患の種類にかかわりなく, 術中・術後の循環障害の強さと, 術後の時間経過に対応し, ショック肺の変化に類似していた. 血管内凝固反応は, 人工心肺使用の有無にかかわらず, 術中, 又は術直後死亡例の全例に認められた. 時間経過例でも, 微小血栓形成が約70%にみられ, 一般手術後例に比べてはるかに高率であった. これは, 白血球集簇とともに, 肺循環, ひいては肺組織に障害を及ぼすもので, 心臓手術後の肺組織における特徴的所見の1つとみなされた. 更に肺循環不全状態を示す重要な所見として, angioparesis像がみられた. これは肺動脈幹枝から末梢に至る血管の麻痺性拡張を特徴とし, 従来, 極急性期死亡例にみられるとされている. 検討例では, 術後あるいはショック後時間の経過した例にも認められ, 全体の72%にlow output syndrome(LOS)を伴っており, 体外循環, 又はショックによる肺虚血後に, 不規則なreflowが加わった結果生じた像とみなされた. angioparesisに高率に伴った肺胞内出血, 血管周囲性出血は, 虚血を初めとした組織障害因子に, 循環障害による血管内圧亢進が加わった結果発生したものと考えられ, 呼吸不全の発症と密接に関係していた. その他, 浮腫, microatelectasis, hyaline membrane, 肺線維化などは, 時間経過に従って, 一般のいわゆるショック肺とほぼ同様の動向を示した. |
